大判例

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東京高等裁判所 昭和60年(う)1304号 判決

所論は,要するに,原審は,デパートのレジスター配置記録その他の証拠類を商品名の特定という立証趣旨のもとに取調べてきたが第87回公判に至って,突然従前商品名を立証趣旨としていた各証拠について,その立証趣旨を販売名と変更し,しかも,かかる変更を第37回公判にさかのぼって行う旨訴訟指揮をしたばかりか,他庁に転出しもはや在籍してない書記官の記名印を用いさかのぼって第37回公判以降の公判調書をその旨書き換えてしまった。かかる措置は,被告人の防禦権を著しく侵害するもので,判決に影響することが明らかな訴訟手続の法令違反である,というのである。

そこで,記録を調査し,当審における事実の取調べの結果をも併せて検討すると,関係各証拠によれば,原審は,その第37回ないし第40回,43回,44回,48回各公判において,三越,高島屋など関係デパートのレジスター配置状況を示す機種一覧表,引合印出納一覧表,引合印使用販売名・使用者一覧表などの各書面,その他これに関連する書面多数を被告人,弁護人の同意のもとに商品名を立証する証拠として取調べをしてきたこと,しかるに,第87回公判に至って,検察官から,従前商品名を立証趣旨としていた前記一覧表等の各証拠につき,その立証趣旨を売場名に改めたい旨申出があり,弁護人も異議なくこれに応じ,その方法として,便宜第37回公判の当初から売場名を立証趣旨としていたように扱うことで関係者が合意し,第37回ないし第48回公判に立会した書記官は既に管外に転出していたが,同書記官の印鑑を利用し,別の書記官が証拠等関係カードの関係部分を書き改め,当初から売場名を立証するための証拠として取調べを請求されて取調べられたように調書を作成し直したことが認められる。

しかしながら,第37回公判から第86回公判までは訂正前の立証趣旨を前提に攻撃防禦が重ねられてきたのであるから,前記のように公判調書をさかのぼって書き直すのは,当事者のそれまでの訴訟活動の意味が記録から判らなくなる虞れがあって相当でなく,訴訟の経過を明らかにするという公判調書本来の機能を十分発揮させるためには,第87回公判でなされた手続経過をそのまま調書に記載するのが望ましいばかりでなく,その当時の書記官が転出してしまい,もはやその者が事実上書き直すという処理方法をとる余地がないのに,他の書記官がその者の印鑑を利用して公判調書の一部である証拠等関係カードを書き改めることは,その権限がないのに公判調書を改変するもので明らかに違法な措置というほかなく,公判調書の無権限書改め部分は公判調書としての効力を有しないものといわざるをえない。もっとも,当審証人甲の供述によれば,書改めの対象となった各証拠自体は,第37回公判から第48回公判にかけて適法に取り調べられていることが認められるのみならず,原審が,原判決別表(一)の各事実を認定するには,商品名を特定する必要があるとの見解に立っていたことは,原判決自体から明らかであるので,この立証趣旨の変更は,犯罪事実の立証という目的からみて後退させたものであって,被告人の防禦に支障を来したとはいえないから,右の違法は,いまだ判決に影響を及ぼさないというべきである。論旨は理由がない。

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